港区の文化財を通じた江戸追体験
~260年の平和を支えた精神と仕組みを探求する〜
2026年8月8日、港区内の文化財を巡る「港区文化財セミナー」の第4回目が開催されました。今回のセミナーでは「交通」をテーマに、江戸の交通を軸に徳川将軍がどのように平和を築いたのかを読み解きました。

講義では、江戸時代、幕府が参勤交代を支えるために五街道や運河、港湾を整備し、人・物・情報が行き交う全国規模の「交通ネットワーク」を築いたことが紹介されました。参勤交代は大名統制の制度であると同時に、物流や商業、文化交流を促進し、日本を一つに結び付ける役割を果たすものでもありました。これによって、江戸の料理や工芸、芸能は日本各地へ広がり、地方の産品や文化も江戸へ集まるなど、双方向の交流が生まれたのです。
なかでも、港区は東海道の玄関口に位置しています。東海道は当初、高輪台付近を通っていましたが、慶長9年(1604年)に現在の国道15号沿いへと付け替えられ、田町・芝・新橋などの町が発展しました。さらに、幕府の法令や通達が掲示されていたことから札ノ辻という地名が生まれ、芝・三田には大名屋敷が建ち並び、参勤交代で江戸へ集う諸藩の拠点として栄えました。
こうした都市基盤の整備を支えたのが、江戸城や城下町の整備に携わった藤堂高虎や、街道・鉱山政策を担った大久保長安です。さらに、利根川東遷や運河整備といった日本史上最大級の土木事業によって、街道と水運が有機的に結ばれ、江戸は世界有数の大都市へと発展していきました。戦国時代の街道が軍のための道だったのに対し、江戸の街道は人や物資、文化を運び、平和な社会を支える道へと生まれ変わったのです。
講師を務めたのは、自身も旅行会社勤務の経験を持つ平成芭蕉こと黒田尚嗣(くろだ・なおつぐ)日本遺産普及協会代表監事です。
▼セミナーにて紹介された「品川日之出」出典:歌川広重《東海道五拾三次之内 品川 日之出》東京富士美術館蔵「東京富士美術館収蔵品データベース」収録(https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/04322/)

